前回からの続きです。
手術の詳細は省きますが
臍のやや下側の皮膚を切開
皮下組織を丁寧に剥離
腹筋の真ん中を切開
腹腔に至るので子宮を露出
卵巣を引き出し、その血管を止めて切る
子宮の根元の血管を止めて切る
子宮の根元を吸収される糸で結んで切る
切った断面を丸く結ぶ
出血がないことを確認する
腹筋を縫う
皮下組織を縫う
皮膚の中を縫う(皮膚の外に糸は出さない)
麻酔を切り覚醒を待つ
覚醒後も酸素室でしっかり様子見
点滴はお返し直前まで流しておく
という感じです。
順調に行ってこんな感じです。
当院での特徴を挙げるとするなら
①
血管の処理になるべく糸を使わず
凝固させる機械を使う
②
卵巣子宮をどちらも全部摘出する
③
皮膚の外側は縫わない
皮膚の内部を縫ってテープをはるだけ
④
エリザベスカラーはつけない
⑤
日帰りの手術
ということでしょうか。
①
体内に糸を残すとそこが反応して
肉芽腫のようになることがあります。
吸収される糸でも起きる時は起きるようです。
特にうさぎは原因不明の膿瘍をお腹の中に作ることが散見されますので
なるべく異物は残したくありません。
凝固切断の装置はそういった術後の肉芽腫や膿瘍の発生を限りなく少なくできます。
また凝固切断の装置は手結びよりも
手術時間が早くなります。
その分麻酔時間も短くなりますので
うさぎにとっては良いこと尽くめです。
病院側のランニングコストが高いだけです‥
②
ウサギで問題となるのはなんといっても
「子宮腺癌」です。
卵巣だけ取る手術で子宮腺癌を防げるという主張もありますが
2歳でも腫瘍化している例を何件かみたことがありますので
子宮は取ってしまった方が良いと思います。
③
術後にキズを噛んで開けてしまうのではないかという不安を持たれる方は多いものです。
私もかつて色々方法を試して
実際術後にキズを噛みちぎられたこともあります。
そのどれもが皮膚の外に糸やステイプラーを
露出させていた場合に起きていました。
いじってもいいように頑丈にしていたのが裏目に出ていたわけです。
そこで当院では皮膚の中を縫った後に
フィルムを貼るという方法をとっています。
このフィルムは結構強力で、術創の違和感を軽減し治癒を早めてくれます。
これで今のところ術後にいじったウサギさんはいません。
傷跡はほぼのこりません。
④
エリザベスカラーはつけません。
ウサギの術後に一番怖いのは
「食欲不振からの鬱滞や脂肪肝など」
です。
カラーをすると極端に食べなくなる子がいる
ので、出来る限り自然に採食してもらうため
カラーはつけません。
前述の③の方法ですとカラーがなくても
ほとんどいじりません。
⑤
ウサギはいつも暮らしている家の方が
明らかに落ち着きます。
術後一番怖いのは食欲不振ですから
家で落ち着いて食べてくれた方が良いのです。
術後に1泊させたりする理由は
静脈点滴をまわして腎臓や循環を維持しておく、
痛みのコントロールなどを注射で行える、
緊急時に対応しやすい
などです。
ただしウサギの場合術後元気になってくると
点滴を噛みちぎる、
点滴に絡まって下手をすると骨折、
ということが起きます。
また一般の動物病院では24時間つきっきりで
みておくことはできないでしょう。
双方メリットデメリットありますが
当院では日帰りの方がウサギさんのメリットが大きいと考えてそうしているということです。
珍しく長々と語りましたが
一口にウサギの避妊といっても
それなりに工夫してるし
手間もかかるものなんだー
と少しでもご理解いただければ
明日からもまた頑張れるというものです。
屶網