短頭種気道症候群のはなし

何やら人間というものは
生き物の鼻っ面が短いと
可愛いと感じる習性がある程度あるようです。

ウサギのネザーランドドワーフやロップ
猫のエキゾチックショートヘアやペルシャ
カエルならジムグリガエルやフクラガエル
ヘビならシシバナヘビ
などなど割といろんな種類で
短頭種といえる生物は可愛がられています。

何よりメジャーなのはやはりワンちゃんでしょう。
フレブルにボストンテリア、パグなどは
とても有名ですし
見ていると可愛いのと
なんともユーモラスかつ
「(小学校の時にいた○○に似てるな‥)」
などと思ってしまうものです。

そんなワンちゃんの短頭種は
「短頭種気道症候群」
という宿命的な病気を抱えています。

もともと口先長めな犬という生物を
ギュッと前後に縮めてある感じですから
鼻の中が圧迫されていて喉のあたりも変形しているのです。
さらに外見から見てわかりやすいですが
鼻の穴がL字型につぶれて狭くなっています。
そのため吸うのに強い力が必要になり中が陰圧になって気管やその周囲の構造が潰れる形になります。
イメージ的にマックのストローを10本くらい繋げて水中でシュノーケル的に空気を吸おうとしたら多分潰れて呼吸できないですよね。
これが「外鼻孔狭窄」です。

呼吸する時に力を入れるということは
鼻と口をうまく分離している
軟口蓋(いわゆる、のどちんこ)という弁のような構造に変に陰圧がかかってしまいます。
それを繰り返すと軟口蓋は炎症を起こして次第に伸びてきます。
それが喉頭という気管と食道を分けている硬い蓋の方までかかってくると呼吸を邪魔してガァガァブゥブゥ言うようになります。
これが「軟口蓋過長」です。
これは生まれつきそうなっている子もいます。

この二つが大きな要因となって
後々はげしい呼吸困難になるような
呼吸器病に発展していきます。

これを予防するにはどうするか。
気道への抵抗というのは入り口の部分の
狭さがなにより影響を受けます。
お部屋を換気するのに
ほんの5mmくらいだけサッシあけて
換気扇全開にしたら換気もできない上に
ピューピューなりますよね。
あと2センチでもあければだいぶ違うのは
皆様経験していると思います。

つまり外鼻孔狭窄をまず若いうちに最初に拡げてあげるのが理にかなっているとおもいます(諸説ありますが)。
この手術はそう難しいものではなく、
避妊去勢手術と同時にやってしまうことができます。
麻酔から起きてすぐに
呼吸が楽になっているのが実感できるはずです。

また術後患部が腫れて呼吸困難になるリスクが低いです。
もう一つの「軟口蓋過長」を短かく切る手術は有効な手術なのですが、術後にそこが腫れて呼吸困難、気管挿管になることが少なからずあることが知られています。

外鼻孔狭窄の一つのデメリットは
鼻の穴が大きくなることによって
顔の印象が変わること‥です。
大きくあければ呼吸はより楽になり
小さくあけると見た目は保たれるけど効果はイマイチ。。
このあたりは飼い主さんとよく相談して
切り方を決定していきます。

手術前 鼻の穴がLですね
手術後 筆ペンの「し」くらいに開きました

鼻の穴の大きさはだいぶ違いますが
顔つきはあまり変わらず
仕上げることができたかと思います。

もちろんもっとガッツリ鼻を開けることもできます。

もし若い短頭種の呼吸で
ご心配があれば
一度ご相談ください。

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